NASCAR のレースは、ほとんどがオーバルトラック(別名オーバルコース)と呼ばれる楕円形のレーシングコースで行われています。
4 types by geometry形状によって4タイプ
オーバルトラックとは、文字どおり「オーバル=楕円形」型をしたコースのこと。基本的には、2本の直線とそれをつなぐ4つのターンで構成されています。しかし、ひと口にオーバルトラックといってもその形状は実に様々。トラックデザインは、大きく分けると4つに分類されます。
通常の楕円形の形をしたもので、これはそのまま「オーバル」と呼ばれています。有名なインディアナポリス・モーター・スピードウェイや、NASCARのシリーズ最終戦の地として知られるホームステッド - マイアミ・スピードウェイなどが当てはまります。
メインストレート部分をやや外側に張り出させて、ちょうどスタート / フィニッシュラインのあたりを緩やかな5つ目のターンとしたコースがあります。これは、「クワッド・オーバル(四角い楕円形)」と呼ばれています。NASCARの聖地シャーロット・モーター・スピードウェイや、アトランタ・モーター・スピードウェイなどは全米でも有数の「クワッド・オーバル」です。
「クワッド・オーバル」の直線部分をさらに外側に突き出し、5つ目のターンの角度がよりきつくなっているコースが「Dシェイプ・オーバル」です。ちょうどアルファベッドの「D」の字に似ていることから名付けられたオーバルトラックです。シカゴランド・スピードウェイやカンザス・スピードウェイなど比較的新しいオーバルトラックによく見られる形状です。
おむすびのような三角形の形をした「トライ・オーバル」。「トライ=3つ」の名前のとおり、ターンが3つしかないコースで、ポコノ・レースウエイやデイトナ・インターナショナル・レースウェイやタラデガ・スーパースピードウェイなど1周の距離が長い巨大なオーバルトラックが多いです。
Different course shapes depending on distance距離によるキャラクター
コース形状のほかに、オーバルトラックは、1周のコース距離によっても分類されています。1周1マイル以下のオーバルトラック
が「ショートトラック」、1マイル~2マイルまでのコースが「インターミディエイトトラック」そして、2マイル以上のコースは「スー
パースピードウェイ」と3つに区別されます。
「ショートトラック」は「ショートオーバル」とも呼ばれ、ドライバーは毎周毎ターンごとにブレーキングをしながらの走行を強い
られ、マシン同士の接触も多く見られます。1周が0.533マイルのブリストル・モーター・スピードウェイや0.526マイルのマーティ
ンスビル・スピードウェイは、毎戦マシン同士の接触でクラッシュが多く発生するコースとしても有名で、それがNASCAR観戦の
醍醐味であり、ショートトラックの魅力だというファンもいるほどです。
「インターミディエイトトラック」は「ハイスピードオーバル」という別名が示すとおり、走行中は常にアクセル全開。NASCARマ
シンの本来のスピードを実感することができます。「スーパースピードウェイ」は、「インターミディエイトトラック」より距離が長く更にスピードが出るのですが、さすがにそこま
でスピードが出ると危険なので、今ではエンジンの吸気口にリストリクタープレートと呼ばれる部品が取り付けられ、エンジンの
出力が制限されます。この規則はデイトナとタラデガのレース時のみ適用されます。
Differences in slope and pavement傾斜や舗装による違い
コース形状、コース距離がオーバルトラックの特徴を表す代表的な要素ではありますが、それだけではありません。
例えば、コーナーの傾斜角がきついか、緩いかによってもレースの性質は大きく異なってきます。
バンク角とも呼ばれるこの傾斜角がきつければ、マシンは高いスピードを保ったままターンを駆け抜けることができます。
例えば、同じ1マイルのトラックでも、バンク角が24度もあるドーバー・インターナショナル・スピードウェイでは1周の平均スピードがおよそ
130mph(=約 209.2km/h)ほどもあるのに対し、バンク角がわずか2度しかないニューハンプシャー・モーター・スピードウェイでは約115mph
しかスピードが出ません。実際のレースでも、ドーバーではターン中に2台のマシンが併走して走る "2ワイド" が実現するのに対し、
ニューハンプシャーではターン進入時のブレーキングで前車をパスする、よりロードコース的な走りが求められるのです。
また、プログレッシブバンクと呼ばれ、アウトラインに寄れば寄るほどバンク角が高くなるラスベガスモータースピードウエイや
左右のターンでバンク角が異なるフェニックス・インターナショナル・レースウエイのように、バンク角の違いがそれぞれのコースの
特徴にもなっています。
コースの路面も、通常のアスファルト舗装のほかに、真っ白なコンクリート舗装のコースもあります。コンクリート舗装は滑りやすいため、それに適応したマシンのセットアップが求められます。